「3人目がほしいけれど、大学の費用を考えると怖くて踏み切れない……」
あるいは、「うちは年収があるから、無償化の制度は使えないんだろうな」とあきらめていませんか。
そう感じている方は、決して少なくないと思います。
実は、子どもを3人以上扶養している家庭には、所得制限(年収の上限)なしで大学の授業料が減免される制度があります。
この記事では、多子世帯向けの大学無償化について、①授業料等減免・②給付型奨学金それぞれの対象条件・減免額・注意したい落とし穴を、できるだけわかりやすくお伝えします。
実は私自身もこの制度を利用しています。使ってみてわかった「ここが助かった」「ここは注意が必要だった」という実感も交えながらお伝えできればと思います。
この記事でわかること
- 多子世帯の大学無償化とは何か、どんな制度なのか
- 対象になる条件(扶養する子どもの数・学校の種類)
- 減免される金額の目安(国公立・私立の違い)
- 給付型奨学金の条件と授業料等減免との違い
- 知っておきたい落とし穴
- 支援がある今のうちにやっておきたい教育費の備え
多子世帯の大学無償化とは?
制度のしくみをシンプルに理解する
この制度の正式名称は「高等教育の修学支援新制度」です。
2020年度から始まり、2025年度から多子世帯向けに大きく拡充されました。
子どもを3人以上扶養(ふよう:親の家計で生活を支えている状態)している家庭が対象で、大きく2つの支援が用意されています。
- ① 授業料・入学金の減免:学費が安くなる・免除になる
- ② 給付型奨学金:生活費として毎月お金が支給される(返済不要)
JASSO(日本学生支援機構)へ申し込むと多子世帯かどうかが確認され、条件を満たしていれば授業料と入学金が減額・免除される仕組みです。
国公立大学であれば授業料のほぼ全額、私立大学は上限の範囲内で減免されます。
私自身も最初は「うちは所得があるから関係ない」と思っていました。
でも、大学から制度の案内が届いて初めて「これ、うちも対象になるかもしれない」と気づきました。
同じように思い込んでいる方も、ぜひ一度確認してみてください。
いくら減免されるの?
文部科学省の発表によると、減免される金額の上限は以下のとおりです。
| 学校の種類 | 国公立(授業料 / 入学金) | 私立(授業料 / 入学金) |
|---|---|---|
| 大学 | 54万円 / 28万円 | 70万円 / 26万円 |
| 短期大学 | 39万円 / 17万円 | 62万円 / 25万円 |
| 高専(4・5年次) | 23万円 / 8万円 | 70万円 / 13万円 |
| 専門学校 | 17万円 / 7万円 | 59万円 / 16万円 |
(出典:文部科学省|高等教育の修学支援新制度)
国公立大学であれば、授業料・入学金は原則として家計負担ゼロになります。
私立大学・専門学校は上限が設けられており、実際の授業料との差額は自己負担です。
入学金と4年間の授業料を合わせると、国公立大学で最大約244万円、私立大学で最大約306万円の減免が受けられる計算になります。
毎年数十万円の授業料が軽くなるのは、家計にとってかなりの助けになります。
子どもが2人・3人と続けて大学に進学する家庭では、その効果はさらに大きくなります。
対象条件を分かりやすく解説
対象となる学校は、大学・短期大学・高等専門学校(4・5年次)・専門学校です。国公立・私立どちらも対象です。
「扶養する子ども3人以上」とは?
この制度のポイントは、「扶養する子どもが3人以上いること」という条件です。
「扶養」とは、税法上・社会保険上の扶養に入っている状態のことです。
わかりやすくいうと、親の家計で子どもの生活を支えており、その子どもが親の扶養に含まれていることです。
子どもの年齢制限は特にありません。
大学を卒業した25歳のきょうだいでも、年収の条件を満たして親の扶養に入っていれば、3人のカウントに含まれます。
22歳・18歳・15歳の3人がそれぞれ扶養に入っていれば、「3人以上扶養」の条件を満たします。
なお判定は、12月31日時点の扶養情報(住民税の課税データ)をもとに行われます。
申し込む時期によって「前年」か「前々年」の情報が使われるため、いつ時点の情報が使われるかはJASSOに確認するとよいでしょう。
自分の扶養人数が何人になっているかは、マイナポータルまたは市区町村の課税証明書で確認できます。
扶養する子どもの年収条件
多子世帯としてカウントされるには、子どもの年収が一定以下である必要があります。
令和7年(2025年)の制度改正により、カウントできる子どもの範囲が広がりました。
| 区分 | 年収の目安 | カウントの扱い |
|---|---|---|
| 扶養親族 | 123万円以下 | カウント対象 |
| 特定親族(令和7年〜)※ | 123万円超〜160万円以下 | カウント対象(新たに追加) |
| 対象外 | 160万円超 | カウントされない |
※ 特定親族とは、税法上は扶養親族に該当しないものの、多子世帯のカウント対象として新たに追加された区分です。令和7年度の税制改正によるものです。
(出典:文部科学省|高等教育の修学支援新制度)
なお、この改正がJASSOの判定に反映されるのは令和8年(2026年)10月以降です。
(参考:JASSO|令和7年度からの多子世帯支援拡充に係る対応について)
支援を受ける大学生本人についても、年収が160万円を超えると多子世帯のカウントから外れる可能性があります。
アルバイトをたくさんしている場合は、年末の収入合計を確認しておくと安心です。
給付型奨学金、多子世帯向けに対象が広がりました
2024年度から「第四区分」が追加された
授業料等減免と並ぶもうひとつの支援が、給付型奨学金です。
毎月一定額が支給される、返済不要の奨学金です。
給付型奨学金はもともと低所得世帯を対象とした制度でしたが、2024年度から多子世帯向けに「第四区分」が新たに追加されました。
これにより、これまで所得条件を満たさなかった多子世帯でも、支援を受けられる可能性が広がっています。
授業料等減免との大きな違い:所得条件がある
授業料等減免が「年収に関係なく対象」なのに対し、給付型奨学金は世帯収入によって支給額が変わります。
第四区分は多子世帯・理工農系向けに追加された区分で、従来よりも高い収入の家庭まで対象が広がりました。
支給額は通学形態によっても異なります。
子どもが一人暮らしで通学する場合は月額がより多くなるため、一人暮らしを予定している家庭は特に確認しておくとよいでしょう。
区分ごとの収入目安は以下のとおりです(両親・子ども3人世帯の場合の目安)。
| 区分 | 世帯年収の目安 | 支給割合 |
|---|---|---|
| 第Ⅰ区分 | 〜約270万円 | 満額 |
| 第Ⅱ区分 | 〜約300万円 | 2/3 |
| 第Ⅲ区分 | 〜約380万円 | 1/3 |
| 第Ⅳ区分(2024年度〜・多子世帯向け) | 〜約600万円 | 1/4 |
※家族構成によって基準額が変わります。正確な目安はJASSOの「進学資金シミュレーター」で確認できます。
(出典:JASSO|給付奨学金のしくみ)
我が家はフルタイム共働きなので給付型奨学金の所得条件には合わず、授業料等減免だけが対象です。
「もしかしたら給付型奨学金も使えるかも」という方は、ぜひシミュレーターで一度確認してみてください。
授業料等減免と給付型奨学金はJASSOへの申請が同じ窓口です。条件を満たしていれば、両方まとめて申請できます。
注意したい落とし穴
制度の内容を知ると、「対象になりそう!」と前向きになりますよね。
ただ、あわせて知っておきたい注意点があります。
知っておくと対策が立てられるので、一緒に確認していきましょう。

落とし穴① 上の子が就職すると、下の子の支援が終わることがある
最も注意してほしいのが、扶養する子どもの数が変わると、支援が終わる可能性があるという点です。
たとえば、こんなケースがあります。
- 長男(大学2年生)・次男(高校生)・長女(中学生)の3人を扶養中
- 長男が在学中は「扶養3人以上」の条件を満たし、支援を受けている
- 長男が卒業・就職して扶養を外れると、扶養は次男・長女の2人に
- 次男が大学に進学していても、支援が終了してしまう可能性がある
「上の子が就職するタイミング」は、下の子の支援に影響が出るタイミングです。
ただし、支援がすぐに止まるわけではありません。
JASSOは毎年10月に支援の見直しを行いますが、判定には「前年の12月31日時点」の扶養情報が使われます。
上の子が4月に就職した場合でも、実際に支援が終了するのは就職した翌々年の10月ごろになるケースがほとんどです。
急に打ち切られるわけではないので、少し猶予はあります。
ただ、いつ頃に終了するかを見越して、早めに家計計画を立てておくことが大切です。
上の子の就職後も、タイムラグのおかげでしばらく支援が続きます。ただしいつかは終了するので、「いつ頃終わるか」を把握して早めに備えておきましょう。
落とし穴② 完全無料ではない
「無償化」という言葉から、費用がゼロになるイメージを持ちやすいですが、減免されるのは授業料と入学金のみです。
以下は別途、自己負担になります。
- 施設設備費・諸会費
- 教材費・実習費
- 通学費
- 生活費(一人暮らしの場合は家賃・食費なども)
- 私立大学の場合、授業料の上限を超えた差額
「授業料の負担は大きく軽くなる、でもそれ以外の準備は必要」と理解したうえで家計計画を立てましょう。
我が家は私立なので、授業料の上限を超えた差額は自己負担になっています。
さらに施設費・教科書代など、毎学期こまごまとした出費があり、「無償化」という言葉のイメージとのギャップを最初は感じました。
授業料の負担は制度のおかげで大幅に軽くなっていますが、それ以外の費用は自分たちで備えておく必要があると実感しています。
落とし穴③ 成績不振が続くと支援が打ち切られることがある
この制度には、学修意欲・成績に関する要件があります。
入学時点では「学修意欲があること」が確認される程度ですが、採用後は毎年学修状況がチェックされます。
公式の基準によると、以下に該当すると支援が「警告」または「廃止」になります。
| 判定 | 基準の目安 |
|---|---|
| 警告 | 単位取得が標準の7割以下/GPA(成績平均)が学部下位1/4/出席率8割以下 |
| 廃止(打ち切り) | 単位取得が標準の6割以下/出席率6割以下/警告が連続 |
例として、卒業に必要な単位数が124単位の大学の場合、1年生の警告ラインは「21単位以下」、廃止ラインは「18単位以下」です。
半期15回の授業で欠席が3回以上あると警告、6回以上で廃止の対象になります(令和7年度からの基準)。
「授業料が減免されるから安心」と思っていると、成績管理が甘くなることも。
子どもが進学した後も、学修状況を気にかけておくことが大切です。

多子世帯こそやっておきたい、教育費”後半戦”の備え
私自身、貯蓄型保険で教育費を準備してきたつもりでいました。
でも、実際に大学生活が始まると、授業料だけでなく一人暮らしの費用や毎月の生活費など、想定よりずっとお金がかかると実感しています。
働いているから何とかなっていますが、保険で備えた分では正直足りませんでした。
だからこそ、この制度で浮いた授業料分の使い道を、あらかじめ決めておくことをおすすめしたいのです。
浮いた授業料を”なかったこと”にしない
授業料が年間数十万円減免されると、その分のお金が手元に残ります。
注意したいのは、「気づかないうちに生活費に溶けてしまう」パターンです。
意識して使い道を決めておかないと、支援が終わったときに「あのときのお金はどこへ……」という後悔につながりやすくなります。
「支援がある今こそ、後半戦に備える」。この発想の転換が、教育費計画の肝です。
私自身も、減免された分は毎月決まった口座に移すようにしています。
仕組みを作っておくと、使い道に迷わずに済みます。
次の子の教育費口座に取り分ける
長子の授業料が減免されている間に、下の子の教育費をコツコツ積み立てる。
これが、多子世帯の教育費後半戦を乗り越えるうえで最も効果的な方法のひとつです。
「教育費口座」を1つ作って、毎月一定額を移しておくだけで、数年後の入学金・授業料への備えになります。
難しく考えなくて大丈夫です。まずは月1万円からでも、続けることに意味があります。
教育費の貯め方については、こちらの記事でもシンプルにまとめています。
子どもの教育費、どう貯める?無理なく続くシンプルな考え方と始め方
一人暮らし費用の備えにする
子どもが大学進学とともに一人暮らしを始める場合、家賃・敷金・礼金・引っ越し代などの初期費用がまとまってかかります。
「そのときになればなんとかなる」と思っていると、いざ請求が来たときに慌てることになります。
授業料の減免分を少しずつ「一人暮らし費用口座」にプールしておくと、そのときに焦らずに済みます。
特別費の積立についてはこちらも参考にどうぞ。
特別費とは?|急な出費に困らないシンプルな積立方法
上の子が就職して扶養を外れると、下の子が在学中でも支援が終わる可能性があります。
支援がある期間と、終わった後の期間を見越して、余裕がある今のうちに少しずつ積み立てておくことが大切です。
「制度があるから大丈夫」ではなく、支援がある今のうちに少し先を見据えておく、その意識が教育費後半戦を穏やかに乗り越えるコツだと思っています。
まとめ
多子世帯向けの大学支援制度について、整理します。
- 授業料等減免は所得制限なし:年収に関係なく、扶養3人以上なら授業料・入学金が減免される
- 給付型奨学金は所得条件あり:世帯収入によって支給額が変わる。授業料等減免と同時にJASSOへ申請できる
- 落とし穴を押さえる:上の子が就職して扶養を外れると支援が終わることがある。完全無料ではない。成績不振が続くと打ち切りになることも
- 制度がある今こそ:浮いたお金の使い道を決め、教育費の後半戦に備える
「3人目を考えているけれど、教育費が怖い」と感じていた方に、少しでも安心していただけたら嬉しいです。
子育て応援の制度は、これからも変わり続けます。
今回のように「知っているかどうか」で家計に差が出ることも少なくありません。
制度をうまく活用していく意識を、今から持っておくといいと思います。
申し込みはまだ先でも、制度があると知っているだけで、お金の備え方が変わってきます。
まず一つ、教育費の積み立てを始めてみてください。

