「奨学金」という言葉を聞いて、何を思い浮かべますか。
ある調査では、66%の人が「借金」というイメージを持っています。一方で、42%の人は「家計の負担を軽減できる」と感じているという結果も出ています(LIMO調査より)。
同じ制度に、まったく違う受け止め方が共存している。それが奨学金というものかもしれません。
「子どもに借金を背負わせたくない」という気持ちは、親なら自然な感情です。でも、物価が上がり教育費も増え続ける今、「準備だけでは追いつかないかも」という不安もじわじわと広がっています。
この記事は、奨学金を検討している方にも、できれば使わせたくないと思っている方にも、読んでほしい内容です。仕組みを知っておくだけで、どちらの選択にも「納得感」が生まれます。
この記事でわかること
- 奨学金には「返さなくていいもの」と「返すもの」がある
- 多くの学生が利用している実態
- 注意しておきたいポイント
- 親として今からできる準備のこと
奨学金の仕組みをシンプルに理解する

実際のところ、大学に進学した学生の約半数が何らかの奨学金を利用しているといわれています(日本学生支援機構・令和4年度調査より)。
奨学金には、大きく分けて2種類あります。
① 給付型:返さなくていい奨学金
給付型(きゅうふがた)は、もらった後に返済する必要がない奨学金です。
ただし、誰でも受けられるわけではなく、採用枠も限られています。
代表的なのは、日本学生支援機構(JASSO・ジャッソ)が提供している給付奨学金で、家庭の収入が一定以下であることなど、審査基準が設けられています。
なお、子どもが3人以上いるご家庭には、所得制限なしで大学の授業料が減免される「多子世帯の大学無償化」という制度もあります。詳しくは別の記事で紹介します。
② 貸与型:返済が必要な奨学金
貸与型(たいよがた)は、卒業後に返済する必要がある奨学金です。
返済が必要なぶん、給付型より利用しやすく、奨学金を使う学生の多くがこちらを活用しています。
提供しているのは、給付型と同じく日本学生支援機構(JASSO)が主な窓口です。さらに2種類に分かれます。
| 種類 | 金利 | 特徴 |
|---|---|---|
| 第一種 | なし(無利子) | 審査が厳しめ・成績基準あり |
| 第二種 | あり(有利子) | 採用枠が多め |
第一種は金利(きんり:借りたお金に上乗せして返す費用の割合)がかかりません。第二種は金利がつきますが、採用されやすい側面もあります。
どちらも、卒業後に少しずつ返済していく仕組みです。返済期間は最長20年ほどになることもあります。
JASSOのほかにも奨学金はある
奨学金はJASSOだけではありません。民間財団・大学独自・地方自治体など、さまざまな提供元があります。
| 提供元 | 特徴 |
|---|---|
| JASSO(国) | 家計・資産・学力の基準あり。まず最初に確認 |
| 民間財団 | 年収制限がゆるめだが学力基準は高め。指定条件がある場合も |
| 大学・専門学校 | 入試成績優秀者枠・在学特待生枠など。家計基準不問が主流 |
| 地方自治体 | UIターンを条件に給付するケースが多い |
どこから調べればいいかわからないという方は、まずJASSOの基準を確認するところから始めてみてください。年収などの条件に合わない場合は、民間財団や大学独自の奨学金を調べてみると、思わぬ選択肢が見つかることもあります。
奨学金の種類・金額・申請時期はJASSOの公式サイトで確認できます。
日本学生支援機構(JASSO)公式サイト
奨学金を使うときの注意点

奨学金を検討する前に、知っておくと安心なことが5つあります。
① 入学金・最初の授業料には間に合わない
これが一番の盲点です。奨学金が口座に振り込まれるのは、入学後の4〜5月からです。
合格直後に支払う入学金や前期授業料(50万〜100万円程度)には、奨学金を充てることができません。この初期費用だけは、親の貯蓄や教育ローンなど別の手段で準備しておくと安心です。
「奨学金があるから大丈夫」と思っていると、合格後に慌てることになります。入学前費用の準備は、奨学金とは別に考えておきましょう。
入学前に必要な初期費用には、教育ローンという選択肢もあります。金利や返済条件はサービスによって異なるので、早めに比較しておくと安心です。
② 第二種の金利は「卒業するときに決まる」
注意しておきたいのが、金利の確定タイミングです。多くの方が「申し込んだとき」に決まると思っていますが、実際には卒業時(貸与終了月)に確定します。
在学中に金利が低くても、卒業する時点で上がっていれば、その時点の金利が適用されます。近年は日本銀行の金融政策の変化により、第二種奨学金の金利が急上昇しています。
| 卒業年 | 金利(利率固定方式※) | 総返済額の目安※ |
|---|---|---|
| 2022年3月 | 0.369% | 約349万円 |
| 2024年3月 | 1.110% | 約386万円 |
| 2026年3月 | 2.423% | 約424万円 |
| 上限(法定) | 3.000% | 約447万円 |
※利率固定方式:卒業時に金利が確定し、完済まで変わらない方式
※借入額336万円・20年返済で試算(JASSO・朝日新聞の情報をもとに作成)
ただし、国の政令によって金利の上限は年3.0%と定められています(独立行政法人日本学生支援機構法施行令)。市中金利がどれだけ上がっても、奨学金の金利が3%を超えることはありません。
それでも、上限に達した場合は2022年卒と比べて利息だけで約100万円近く増える計算になります。給付型・第一種(無利子)を優先して確認し、条件が合わない場合に第二種を検討する順番がおすすめです。
③ 機関保証を選ぶと手取りが減る
奨学金を借りる際、返済できなくなった場合に備えて保証人を立てる必要があります。親や親族に頼む「人的保証」のほか、保証会社に保証料を払う「機関保証」を選ぶこともできます。
機関保証を選んだ場合、毎月の振込額から保証料が差し引かれます。月10万円借りる予定でも、実際に口座に入るのは9万円台になることがあります。借りる金額を決めるときは、手取り後の実際の金額を確認しておきましょう。
④ 返済が遅れると信用情報に影響する
奨学金の返済義務は、子ども本人にあります。延滞が続くと、住宅ローンやクレジットカードの審査に影響することがあります。返済が始まる社会人になったとき、子ども自身がきちんと管理できるよう、今から「借りた分は返す」という意識を一緒に育てていけるといいでしょう。
⑤ 在学中の成績次第で打ち切りになることがある
給付型・貸与型ともに、留年や著しい成績不振が続くと支給が止まることがあります。「入学できれば安心」ではなく、在学中も条件があることを頭に入れておきましょう。
親として今から考えておきたいこと
① 「いくらまで出せるか」の上限を決めておく
「行きたい大学なら応援する」という気持ちは自然です。でも、教育費が高騰している今、上限を決めずに進めると後から家計が苦しくなることがあります。
考えておきたいのは、老後資金との両立です。教育費のために老後の備えを削りすぎると、子どもが独立してから親自身の生活が苦しくなります。「子どものためだから」と無理をしすぎない線引きが、長い目で見ると親子両方を守ることになります。
自宅通学か一人暮らしかによっても、必要な総額は数百万円単位で変わります。子どもが小さいうちから「うちはだいたいこのくらいまで」と大まかに決めておくだけで、準備の方向性が決まります。
② 足りない分は「誰が・どう返すか」を話し合っておく
親の準備だけでは足りない場合、奨学金で補う選択肢があります。そのとき大切なのが、「誰が返すか」を事前に家族で決めておくことです。
- 親が実質的に返す(教育ローンに近い使い方)
- 子どもが自分で返す
- 親子で分担する
どれが正解というわけではありませんが、決めずに進むと卒業後に「こんなはずじゃなかった」という行き違いが起きやすくなります。子どもが高校生になる前に、一度家族で話せるといいでしょう。
③ 万が一のときの「救済制度」を知っておく
子どもが社会に出てから、病気や失業で返済が難しくなることもあります。JASSOには、返済額を一時的に減らす「減額返還」や、返済を先延ばしにできる「返還期限猶予」という制度があります。
こうした制度があることを親が知っておくだけで、子どもが困ったときに適切な手続きを促せます。延滞が続く前に相談できるかどうかで、その後の状況が大きく変わります。
教育費の準備の考え方については、こちらで詳しく書いています。
子どもの教育費、どう貯める?無理なく続くシンプルな考え方と始め方教育費を積み立てる手段のひとつとして、新NISAを活用する方法をまとめています。
新NISAの始め方|何から始めればいい?初心者でも迷わない手順と選び方
正直なところ(体験談)

正直に言うと、私は「奨学金は使わない」と思っていました。自分の親がそうしてくれたからか、なんとなく「うちもそうするもの」という感覚があったのかもしれません。
でも今回、この記事を書くために改めて調べてみて、いくつか驚いたことがありました。
給付型奨学金があること自体は知っていましたが、「採用枠が限られている」「家計基準だけでなく学力基準もある」ということは、ちゃんと理解していませんでした。「もらえるかもしれない制度」ではなく、「審査がある制度」なんだと。
もっと驚いたのは金利のタイミングです。借りるときに決まると思い込んでいたのが、実際には卒業するときに確定する。今の金利上昇を見ると、これは親として知っておくべき話だと感じました。
上の子はすでに大学生で、教育費がかかっている真っ最中です。下の子の大学進学まではまだ8年ほどある。そのとき慌てないために、今のうちに仕組みを知っておけてよかったと思っています。
知っていれば、いざというとき選べます。
まとめ:仕組みを知ると、選択肢が増える
奨学金は「良い・悪い」で決めるものではありません。家庭ごとに、納得できる形を考えることが大切です。
- 給付型・第一種(無利子)はまず最初に確認。審査はあるが返済負担が少ない
- 第二種(有利子)は金利が卒業時に確定する。近年は急上昇しているので注意
- 入学金には奨学金が間に合わない。初期費用は別で準備が必要
- 「いくらまで出せるか」「誰が返すか」を家族で話し合っておく
子どもはいつか大きくなります。そのとき慌てないように、今日少しだけ考えてみる——まずは教育費をどう貯めるか、考え方だけでも知っておくと安心です。
あなたとお子さんの未来が、少しでも安心できるものになりますように。
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